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夢舟亭
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<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません>

夢舟亭創作館 エッセイ     2013年03月06日




   オーストラリア映画「シャイン」


 オーストラリアに実際にいるピアニストの「輝ける(シャイン)」逸話ですね。

 彼はユダヤの家系というせいなのか、厳格なしつけの父親に育てられた。
 それは今どきのドメスティックバイオレンス(DV)などの家庭内暴力ぎりぎりの虐待の感じも受ける表現になっている。

 この父親としては、何ごとも家族同士が最優先であるべきだという信念があるようだ。
 その根元には、ナチスの迫害を味わった同族の悲哀が根付いてあるのだ。家族の結束以外に自分たちを守る手段はないのだという思いが鋼のように固い。
 それは、社会へも人間へも不信感が異常なほど強い、ということの裏付けでもあるのだが。
 それが過ぎるあまり、主人公の彼をふくめた兄弟姉妹を幼いうちから拘束して育てた。すべては父の許可のもとに行動する、というように。

 その父親は音楽好きで、とりわけピアノの演奏にひとかたならぬ関心がある。じっさい自分でも演奏するようだ。それも独学の志なのだ。

 その父親が演奏を幼い彼に教える。
 どこにでもあるような、何とか弾けるようになった子ども、程度なら話はそこまでなのだろう。
 けれど目覚ましい彼の上達ぶりと熱意は、輝くべきピアノ人生を広げてゆくから困る。いや話は興味深く、複雑さを増す、というべきだ。父親恐怖症というと、どことなくモーツァルトっぽいか。

 ピアノ演奏の才能が世間に認められてゆくにつれて、社会不信の父親の彼への行動規制の言動が、才能開花の支援者などとの関係障害となって立ちはだかる。それが親子の関係も家族同士にも混乱が生じる。最悪は、それにより師を失いコンクールの入賞も逃す。

 それでも、やがて作曲家ラフマニノフのピアノ協奏曲第三番という難曲に挑むほどになるのだが・・・

 かなりの映画好きの方々がすでに承知している当作品は、アメリカ映画界、アカデミー賞ほかで高い評価を得ている。
 とくに、主役の精神的に異常をきたすピアニストを演じたオーストラリアの ジェフリー・ロイ・ラッシュには、主演男優賞を与えられた。
 この人は、映画「英国王のスピーチ」で王子の言語障害を治す役が近年の役だったと思う。そう、あの人だ。

 音楽に関わる映画作品は多いなかで、この映画撮影には実在している主人公の輝く手指が、実演で撮られているのだという。




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