・・・・ 夢舟亭 ・・・・ |
<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません> 夢舟亭 エッセイ 2012年 5月30日 アンドレ・リュウの音楽 スイートな弦楽器群の音色、ムードミュージックの世界も、いまでは語りぐさになって久しい昨今。 そういうした種類の音楽−−たとえば、マントヴァーニ、パーシーフェース、フランクチャックスフィールド、アルフレッドハウゼ、レーモンルフェーブル、フランクプールセル、ポールモーリアなどが独自のセンスで、自分のオーケストラのためにアレンジした曲、その演奏の数々−−がリアルで聴かれたころ。 あれから月日はどんどん流れてしまって…… たとえ録音された演奏を楽しめるじゃないかといってみたところで。やはり逝ってしまった彼らはもどらず。 モダンで、センスが良くて、爽やかで、憂いも秘めて哀愁が感じられて、切なくて。そういった新しい曲、新鮮なアレンジを楽しむことはもうできない。 なぜかそういった種類の、弦中心の編成のオーケストラ演奏ものが見られない聴かれない。そんな今どきはやはり寂しい。と思うなかで…… アンドレ・リュウという名を、今忘れるわけにはゆかない。 オランダの城に住むというアンドレ・リュウ。1949年生まれというからベビーブーマー世代。音楽世界ではまさに旬、円熟のひと。 こうした音楽家の常というべきか、クラシック音楽の基礎のあるヴァイオリニスト。そういえばマントヴァーニもヴァイオリンの名手でした。 クラシックの堅苦しさに疑問をもち、それに共感をもつ有志でオーケストラを結成したのだという。 だから彼の大編成オーケストラは、カラフル衣装で演奏ステージは明るく綺麗で、会場はダンスまで有りの和気藹々といったところだとか。 いかにも映像時代の観るにも値するムードミュージックオーケストラ。 世界中をツアーしていて、日本にも何度か来ている。 クラシック曲から映画音楽、ミュージカル、民謡・・と境界ないレパートリーだ。 世界ワルツ紀行のCDをランダムに聴く。 「ダーク・アイズ」 ご存じの、黒い瞳。 大編成の管弦楽団なのに重くない、と感じる。わたし的にはちょっともの足りないほど。 けれどその分、爽快な流れがあって楽しい。 難しくない音楽を志向する彼の思いがこれなんだろうと感じる。深刻ではないのだ。 「初夏の恋」 フランクチャックスフィールドオーケストラの大ヒット「引き潮」の波とかもめの音を思い出したイントロ。 それへ、アンドレ・リュウ独特のヴァイオリンが切なく奏される。ああこれがアンドレ・リュウだなと分かる。 歌詞のないコーラスがまたいい感じで迫る。こういう盛り上げかたも彼独特。 「メリー・ウィドー」 まさにアンドレ・リュウのオーケストラにぴったり。酔えます。 「グラナダ」 ギターのつまびきから一瞬にしてオーケストラの合奏となりスペイン情緒が刻まれながら醸し出される。じつに結構でございます。 「エーデルワイス」 有名ミュージカルの一曲。原曲の平和への賛歌でしょうか、歌いあげるコーラスの響きがいいな。 「ブラームスの子守唄」 オルゴールのようなチェレスタ演奏からヴァイオリンとなって、女性コーラスが優しくていいのです。 「荒城の月」 わが国、滝廉太郎の名曲はヴァイオリンソロからはじまる。 暗くなりすぎずも、原曲のもの静けさはしっかりとあって、しかも荘厳にしあがっているのです。 「美しく青きドナウ」 いったいどういうふうに料理してくれるのか、と楽しみに聴けば…… 原曲か、ごくごくオーケストラ演奏そのままに始まりました。 思えば、この曲にどんな味を加味する必要がありましょうか、という感じ。 わずかにテンポ、間、のとりかたを変えてあるかな。 約8分の演奏。当CD中ではさすがに聴き応え充分の力量を感じました。 現役ムードミュージックの星、アンドレ・リュウとオーケストラ。 ますますの活躍を祈る次第であります. |
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