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夢舟亭
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<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません>

夢舟亭  エッセイ   2012年 5月 1日


   邦画2008「歩いても 歩いても」


 帰省する子どもたち家族をむかえる老医師夫婦の物語だ。

 あまりに自然で演技らしさがどこにも感じられない樹木希林が、先日惜しくも逝っしまった原田芳雄が老いた頑固夫に、上手につれそっている。

  ひと足先に戻っている子ども、姉役は「だれも知らない」での無責任母役よりは今回ずっと真っ当? な、YOU。
 営業マンの明るい夫とこども二人の家族とともどもの帰省だ。

 その弟が、ほかの役での果敢精悍な男をやっているはずの、阿部寛。持ち前のすらりとした体躯を気弱に丸めて、頑固な父に反抗の気持ちをもらす。監督のねらいが表現されてよく伝わってくる。

 この二人の姉弟にはいまは亡き兄が、いた。親の期待に応えうる立派な兄が。
 弟はいつも兄を比較対照とされ下に見られながら育ってきたことが、家庭をもったいまも心に陰をつくっているのだった。父への不満の元がそれなのだ。

 とはいえ、けして凄まじい事件がおきるわけでもないこの物語には、原寸大の、帰省子ども家族をむかえる親と、血を分けた子とそうでなく家族となった者の、本音が過度の嫌みもなく自然に映しだされる。
 それでありながら、その表現がこの映画の味として楽しめると思う。

 楽しめるとき、あなたの家庭も似たような些細なことがちりばめられていますでしょう、とカンヌ国際映画祭で高い評価を得たほどの是枝裕和監督がほほえんでいるように思えた。

 わたしたちは多かれ少なかれこういうふうに終えてゆけるなら、幸せなのですよね。

 そう、「歩いても 歩いても〜♪」ですね。




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