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夢舟亭
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<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません>

夢舟亭創作館  エッセイ   2014年 12月 27日


   日本映画「超高速参勤交代」と「家路」


 日本映画、「高速参勤交代」と、「家路」を観ました。

 娯楽(エンンターティメント)、と、シリアス(深刻)。

 江戸の時代と、現代の真実社会。

 そんな、一見無関係なふたつの映画は、共におらが郷土、「福島」が背景にあるこの作品、ご承知でしょうか。

 もちろんどちらも知ってるぜ、と頷くかたはかなりの映画通かもしれない。

 まず「超高速参勤交代」から。
 江戸のころの「参勤交代」の制度の話。

 田舎大名をナメきった幕府の重役が、今でいう「いわき市」のある城主へ、大金を使い果たして終え里に戻ったばかりの大名行列「参勤交代」を即、折り返して江戸に戻れ、参勤せよと指令を出す。

 無理難題でしかないわずかな日数が与えられ、それが果たせないなら「当家はお取り潰し」との、表向きの改革、じつは弱小藩いじめ。

 元より、このお達しは、不可能な結果が見えている話である。
 しかるに「下」の筆文字の幕府の令には逆らえない。

 さぁどうなさりますンべヤ、殿ぉ!

 と、こうした序幕から、本筋に入ってゆくこの作品。

 行くゾ!

 役者を脇役から眺むれば−−

 陣内孝則、西村雅彦、石橋蓮司。女性陣は、深田恭子、ほか見慣れた若手タレントが多数並ぶ。
 そして主役、田舎大名御殿が佐々木蔵之介、将軍は市川猿之助とくるが、さぁどうでしょう。面白そうでしょう?

 結論は見え透いていたわたし的にも、予告編を超える面白さだった。そう、面白い。

 まさか、未鑑賞者の多いなかでの話筋書き連ねは出来ないけれど。

 末巻にて、「悪政などにより、いわきの土を汚すなどあってはならない」との、将軍様のお言葉が、笑い転げた我が身を脳天から貫いたことだけは、書き残しておかないわけにはゆかないのであ〜る。

 娯楽とはいえピリリと、有難い御コトバ。

 このコトバの意味、お分かりだろうか。

 いわき市は、連続爆発基をふくむフクシマ原発10基が並ぶ浜通り地域なのであります。

  *

 さて、まさにその「ゲンパツ」の話が、次のベルリン映画祭出品、「家路」。

 東北の玄関口に位置する福島県が、311以後世界に知れ渡った「フクシマ」となってからの地と化して、人々老若男女みながどう苦悩しているか。

 大河ドラマで主役平清盛その人を演じた、松山ケンイチが、福島弁でフクシマの現実に苦悩する現代の農家の若者を熱演してくれている。

 その老母には、田中裕子。兄は内藤聖陽。その妻を安藤サクラ。その父を先出しの作品にも出た、石橋蓮司。

 超高放射線量で住めなくなった自宅の地から追い出され、遠く狭い仮設住宅の一部屋で生活するこの家族と、おなじく避難している仲間に、リアル現実等身大の「戻りたい、けど、戻れない」苦悩の数々を見ることになる。

 そして最後に、現実離れとでもいうような希望をささやかだけれど切ないけれど見せてくれるのが嬉しい。

 想定内のお涙頂戴作品などではけしてないし、まして通り一遍のドキュメンタリーものでも当然ないこのドラマでは、ときに過激な悔しコトバを交わされるが、それが重く響くはずだ。

 ちなみに、「家路」は住むことを許されない故郷にいまも鳴り響くあのドボルザークの新世界からのチャイムのメロディであり、離れて住む人々の胸の内でもあるのだろう。

 わたしなどが常日頃散策撮りするとおなじ福島の自然「うつくしま」風景美とともに、福島人の辛い思いがせめてニッポン人に、出来れば世界人に伝わることを祈り願う作品なのでありました。

 そして、少なからず電力各社はじめ産業財界経済人や政府人には「怖い目」で睨まれ干されるかもしれない危険を承知で、集い創った関係者と出演者に、福島の片隅から老手合わせ感謝したい気持ちです。

 よくそ創ってくれましたね、と。




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