・・・・ 夢舟亭 ・・・・ |
<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません> 文芸工房 夢舟亭 エッセイ 2012年 1月 06日 ウィーンフィル ニューイヤーコンサート2012 1987年のカラヤン指揮から毎年お正月のわたしの初仕事? がこの番組の録画。すでに30本(枚)を超えている。 オーストリアはウィーンの金襴豪華な楽友協会大ホールから、衛星生中継。 正面の花々に埋めつくされたステージに、ずらりと居並ぶは当代きってのウィーンフィルハーモニーオーケストラの演奏集団、フルオーケストラ。 ニューイヤーコンサートは、けして一曲数十分の大曲演奏ではなく。一曲数分間のワルツやポルカなど、ワルツ王一家の名曲を中心にした、新年恒例の、世界十数億人が鑑賞するというあの音楽番組です。 わたしは、生中継をその時刻に楽しむことはなく、帰省帰宅した家族でにぎわう酒宴のあいだは、存分に付き合って。皆が戻っていって勤め仕事がはじまったあたりに。 自室ミニホール四方の窓カーテンを閉じて、おもむろに大スクリーンに向かって坐るそのときまで、ニューイヤーコンサートのオープンを控えるのです。 なにせこの地球の裏側からのこのうえない贅沢な演奏は、5.1チャンネルのサラウンド音が鑑賞する者をつつみ込むのです。 それら装置のあれこれを、リモコン3個を使い分けて調整する準備が要る。 番組の不要な部分を早送りでスキップすれば、大ホールの割れるような拍手が指揮者のお出ましを大歓迎。マリス・ヤンソンス、ロシアぱりぱりの実力者。 その指揮棒が振り下ろされる第1曲目は「祖国行進曲」。 これがなんと……、最後にアンコールとして奏されるのが通例の、あのラデツキー行進曲、の一部が鳴る。 ヨハンとヨゼフのシュトラウス兄弟の作という。あれれ、ラデツキー行進曲はたしかヨハン1世(父)のものだったはず。と後で調べれば、父の名曲数曲を織り交ぜたのがこの祖国行進曲なのだという。 そうしたわたしごときでも耳にしている曲からのスタートが嬉しい。 と思えば。 2曲目「市庁舎舞踏会でのダンス」というワルツ曲もまた。 耳になじんだ、ジャラララー、ジャジャジャジャーンと、美しく青きドナウのメロディーで始まった。これも恒例のアンコール曲。最後のお楽しみのはず。 この曲もまた既知のドナウあの曲がところどころに顔を出すのが楽しい。 それにしてもウィーンの放送局が年一度のこの音楽番組に、どれだけ精魂込めたかということが、素晴らしいハイヴィジョン映像と5.1の音とに感じる。 どの曲のシーンでもただ演奏を楽しませるだけにとどまらず、ウィーンの宮殿映像をこれでもかと鮮やかに映しだす。 世界の一級奏者たちが正装で揃って腕をふるう、とはいえそれはおじさんたちだ。そうそう見続けるのも……なぁ、という思いを百も承知のかの国の番組制作者のプレゼントはとっても粋だ。 さらには「トリッチ・トラッチ・ポルカ」となれば、お揃いの白いセーラー服の子どもたちがオーケストラの頭上、パイプオルガンの周りに勢揃い。 可愛い透明な声、それは天使の歌声かと響かせる。 この曲は過去にも何度か奏されたはずだが、人種こもごものウィーン少年合唱団のコーラスをふくめたのは珍しい。指揮者ヤンソンス氏の計らいだろうか。 楽しむ世界から集う観衆もまた大拍手を惜しまず、曲を終え少年たちを見送った。 こうして全24曲が、第一部、第二部の前半後半にわかれ、中休みのあるコンサートが進められた。 そのすべての愉しさを綴るとページがとても足りなくなるが、「人生を楽しめ」ワルツなどは、題名だけでなくしっくりと馴染むメロディーとウィーンバレエ団の輝く舞踏とともに良かった。 楽しさで笑みこぼれるのでは「鍛冶屋のポルカ」。 ここでもウィーン少年合唱団合同。加えて指揮者ヤンソンス氏の槌を両手にした鍛冶屋ぶりが楽しい。 再放送などあればユーモアのハイセンスを是非ご賞味願いたい1曲だ。 こうしたユーモアを所々に交えてあるのがこの番組の演出、隠し味。 わたしが聴き続けはじめた頃のオープニング曲は、「こうもり」喜歌劇のあの序曲がお定まりだった。 曲もほとんどが、シュトラウス一家の手によるものだったように記憶している。 それが、毎回の指揮者交代で、少しずつ独自の選曲で広げてきて、今回などは、嬉しいことだがビゼーとチャイコフスキーの曲まで演奏された。 ビゼーのでは、あの「カルメン」から。チャイコフスキーは「眠りの森の美女」からだった。 どちらもよく知られたメロディーが心憎いばかり。なんとも贅沢なあの流麗の極地であるオーケストラサウンドで耳を心を、酔わせもらえたのです。 今年は是非良い年になって欲しいと、定番アンコール、「美しく青きドナウ」と、皆さんお手を拝借の「ラデツキー行進曲」と、心の底まで潤したというワケ。 |
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