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<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません> 夢舟亭創作館 エッセイ 2013年02月28日 邦画「お日柄もよくご愁傷さま」 お日柄もよく誠におめでとうございます。 このたびはご愁傷さまでございますす。何卒お力落としのないように……・ 婚礼を祝す挨拶と、亡き人を悼み家族を慰める思いが、こんがらかり交錯してしまう騒動話です。 出演は、橋爪功と吉行和子が夫婦役。そう近年リメークされた「東京物語」とおなじ。 十数年前の作品だが、リストラ左遷されたことを隠しながら同僚の娘の仲人と、実父の葬儀とを同時にこなす苦労を橋爪の奮闘、夫役は見がいがありました。 それを支える吉行妻も、臨月の出戻り娘と年頃の娘ふたりと、夫のあいだを出しゃばることなくもなかなか上手く取り持つ辺りが良い。 お題の語呂響きから、この作品が喜劇だろうとは思ったものの、いやじつに壮年世代熟年域に達した方々の共感を呼ぶ出来だと思うのだ。 何といっても、冠婚葬祭となれば、ひとが数十年生きて未経験ということはあるまい。もっといえば、その何度かは、自分が招く側になったことさえあるだろう。 それが人生経験のそれぞれ1ページとなって、「いやぁじつはあのときは参ったなぁ」と苦労裏話のひとつも記憶にあって当然だと思うのだがどうだろう。 そうした自分のあの日あの時を思い出させずにはおかないような作品なのだ。 ふふふ。やってるやってる、と。 家族にかぎらず死は突然襲ってくるし、誕生もまたおなじ。 目出度い席での祝辞はあがるものだ。聞いていないようで失言漏れほど聞き耳を立てる宴席。 家族、子どもたちは、親の都合良く場をフォローし救ってくれるとも限らない。さりとて、まったく我関せずを貫くかといえば、そんなこともない。 そして、血のつながった家族の輪が、他人との縁組みでひろがるのもまた人生。そこにまた次世代の血縁の生命が誕生する。 そうしたとき、けして百点満点ではないわが人生も、満更捨てたもんじゃないな、と薄くなった頭をなでては、伴侶に微笑むものかもしれない。 ハリウッドばりのカーチェイスも銃声や爆炎も、宇宙CGも、寄れば触ると激しいおふたりや、甘ったるいハッピーエンドという類のもの一切が無い。ただただ、なんとも嬉しくなるご近所的な味が良い映画作品なのでした。 はい、「本日はお日柄もよく、ご愁傷さまでございす」。 |
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