・・・・ 夢舟亭 ・・・・ |
<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません> 夢舟亭 エッセイ 2011年 11月17日 レーモン・ルフェーブル・オーケストラ レーモン・ルフェーブル・オーケストラ。自らの名の演奏集団を率いたレーモン・ルフェーブル氏の音楽もまたスイートだ。 ただスイートなだけでなく、控えめで優雅である。そこがじつにわたし好み。 おもえば、かなり若いころからファンになっていた気がする。 マントヴァーニーサウンドをスイートなミュージックの王者とするひとは多い。わたしもイギリスのそれに異論はないのだけれど、フランスのこのレーモン・ルフェーブルサウンドも良友ポール・モーリアとは似て非なる独自世界を楽しませてくれる。 もっともこの後に書くつもりの、アメリカのスイートな軽音楽(ポピュラーミュージック、ラヴサウンド、ムードミュージック、イージーミュージックなどなど言い方はいっぱいある)の、名オーケストラだってあって。そこには当然魅力あふれる独自な音楽世界を展開し楽しませてくれるのではあるけれど。 とにかく今回はレーモン・ルフェーブル・オーケストラ。ならぶヒット曲がイイのです。 レーモン・ルフェーブル・オーケストラといえば、「シバの女王」。 ある年のコンサートの席で、この曲名紹介があるとどうじに「この曲を聴きたくて来たんだものぉ」とおもわずつぶやいてしまったかたが後方にいらした。 とうぜん周囲の冷ややかな視線をあびたけれど、その気持ちに共鳴するほど待ちこがれた日本のファンが少なくないのだとわたしはおもった。 レーモン・ルフェーブルもまた編曲・指揮者であってみれば、自作曲ではなく既存曲のなかからこれぞという曲を見いだして。見事に自オーケストラに演出編曲という料理をほどこしてしまう。 この「シバの女王」も聖書の伝説から生まれた1960年代の既存、シャンソン曲らしい。それを見いだしたレーモン・ルフェーブルが手にし腕をふるった。そしてヒット。 世界中の音楽ファンの心、その琴線をゆらした。 イントロ、曲頭のギターのつま弾きからひゅるるーっ。ストリングス(ヴァイオリンなど弦楽器の群奏)までで、聴衆はほぼ参ってしまうだろう。 そして3分間、異国古代のラヴストーリーを夢想共有することになる。それはけして俗なものでない雰囲気が、多くを惹きつけるレーモン・ルフェーブルサウンドとマッチしているのではないだろうか。 俗でないといってもレーモン・ルフェーブルの編曲は高尚すぎるというものではない。 ただ彼の選ぶ曲にクラシック曲はじめ物静かなものが多い気がするのはわたしだけだろうか。そこがまたレーモン・ルフェーブルの魅力なのだが・・ だから、奇をてらった楽器やリズムを多用する演奏は少ない。それはそのままレーモン・ルフェーブル氏の、真っ赤な服と帽子を羽織ればすぐにも優しいサンタクロースになれそうな、白髪と白い髭の言葉少ないスマイル。あの人柄そのものなのかもしれない。 モーツァルトの交響曲(第40番・第一楽章)が源曲の「愛よ永遠に」もまた、多くの人に喜ばれる編曲演奏にしあがった。 この演奏を耳にしてモーツァルト曲のファンになった人も少なくないという。一聴では軽快だけれど、聴き進むにしたがってもの哀しく疾走する感じがいい。 クラシックからの「涙のカノン」「恋するガリア」「月光のソナタ」「恋のアランフェス」などなどもまたレーモン・ルフェーブル・オーケストラサウンドらしさを味わうことができる。 またクラシック曲ではないけれどその感じに仕立てたレーモン・ルフェーブル・サウンドのいい曲が少なくない。 「哀愁のアダージョ」などはそうしたお薦めの曲だ。 ピアノ演奏からはじまりストリングスがしっとりと入れかわる。中間部から後半のヴィオラやチェロのあたりまでですっかり酔ってしまう。 もちろんレーモン・ルフェーブル・オーケストラの演奏曲は、ほかのこのジャンルのオーケストラがやるほとんどの軽音楽の往年のヒット曲をやってくれている。 自国フランスの曲、マイウェイ、詩人の魂、枯葉、パリの空の下、愛の賛歌などシャンソンもいい味が楽しめる。 そんなポピュラーななかで、わたしは「この胸のときめきを」がいい。たしかラジオ番組でテーマ曲に長く使われていた。 テーマ曲に使われたといえば「夜間飛行」がある。FM東京の長寿音楽番組、ジェットストリームのエンデングのテーマ曲だ。(ちなみにジェットストリーム開始曲はフランクプールセルオーケストラの「ミスターロンリー」) 番組提供が航空会社ということから飛ぶジェット旅客席の雰囲気のなかに流れた。 ジェットストリームは、FM放送大学の実験局のころからの知る人ぞ知る、このジャンルの音楽を日本に広く普及知らしめた功績大なるものがあるラジオ番組である。 FM番組のテーマ曲に使われたレーモン・ルフェーブルのでもうひとつ、「想い出のラスト・キッス」。日曜喫茶室のあの曲、あの演奏だ。 またまた長くなってしまって収拾がつかないので、最後の一曲。 「枯葉」。先に紹介したマントヴァーニーもポールモーリアもそれぞれやっているけれど、レーモン・ルフェーブルもまた独自、晩秋の切ない恋の想い出をチェロで醸しだしてくれる。 |
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