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夢舟亭
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<この文章は商業的な意図をもって書かれたものではありません>

夢舟亭創作館  エッセイ   2014年 6月 12日


   写真とわたし



 デジタルカメラを手にしてもう何年になるだろうか。
 今では平均的なカメラの1画面を構成する画素数が2000万個を超えた。
 当時のわたしの最初は30万画素だったのだから、60分の1という画面密度でしかなかったわけだ。
 もっとも当時はとうじで、それが手に入るものとしては普通の性能だったのだ。

 わたしはフィルムカメラは20歳代まで白黒モノクロを楽しんだが、カラーやバカチョン時代になってからは、ほとんど撮っていなかった。

 それがフィルムの要らないデジタルになり興味がでたのは、撮った画像が即見れて、その場で撮り直しが出来る。さらにフィルム不要というのは魅力だ。

 そんなわけで40歳代で公私の時間の別なく、常に持ち歩くようになった。
 なによりポケットサイズというのが良いのだった。

 パソコンはインターネット時代となり、文字だけのパソコン通信では不可能だったところから、一挙に画像掲載のマイページ公開が常識になった。
 わたしも、他人から見ればどうでも良いものなどを、持ち前の厚顔さを味方に、載せはじめた。

 以来、今日まで少しずつではあるが、撮る面白さを知り、映像の深さを見聞きしては、カメラ機材などをレベルアップしてきた。
 同時に近場のフォトコンテストで入賞などする度に、他作品と比較検討。すると自然に良い写真の何たるかにもそれなりに、気づく。疑問が湧けば図書館などでその筋の書を開く。そして試してみる。
 よく、良いカメラ、高価な機材には叶わないでしょうなどというけれど、それはあくまで、同じ条件で同じ人が同じ被写体を撮るなら差が出るだろう、という程度に考えたらのハナシ。上手なひとはコンパクトカメラでも素晴らしい絵に撮り切るものだ。

 と、まぁ、カメラ好きなら誰でも通る道を、わたしも同じく歩いては、似たような屁理屈をこねているだけのこと。

 気づいたら定年のリタイアに至ったもののまだ心身には余力があった。
 追加するなら、俗にいう「右脳」、つまりアートや感性を司る脳みそで遊ぶのが好きなのが、幸いしているようだ。

 何といっても、絵になる写真を撮るという行為は、数値で評価判断できるハナシではない。

 大概の仕事業務、とくに企業活動のビジネス指向のなかでは、理論や数値、算術世界、理詰めの中を生きることになろう。

 けれど、写真を撮るという行いの、アート(芸術)性というものは、数値で測れない表現できない分野であることは、どなたもご承知。

 良いものは良い。綺麗なものは綺麗。素晴らしいものは素晴らしいと、はっきり「感じる」のだからしょうがない。
 でも、それが何パーセントだとか何グラムだとか何センチとか数値では表現できない。

 わたしなどのヘッポコ写真でも、撮りためた画像をパソコン画面で整理しながら見てみると、たしかに間違いなく、良い、悪い、いまイチ、と「感じる」。

 さらに分析すれば、それにはそれなりの理由がある。
 光の多い少ない。光の向き。メリハリの強弱。被写体の切り取り(画面に入れるもの)の視野の広さや角度、高さ。などなど……きりがない。

 そういう条件を変えればより良くなる。とはいえ、ではそれでマルかといえば、やはり撮ってみなければ分からない。そうシンプルではないのだ。

 わたしなどが被写体としている自然は、まさに「一期一会」、出会ったその時その瞬間だけの勝負だから困る。
 朝、散歩で見つけた野草の花は、昼に出直してももう遅い。自然は生きているのだから、生物、植物も太陽も気候もが、時々刻々と様子を変えてしまうのだ。一瞬たりともとどまってポーズを決め待ってやしない。

 そういうもろもろの条件が、面白いと感じたらもう撮ることを辞めるなど無理だ。いわゆる「ハマって」しまっているのだ。
 そんなものを撮ってどこが面白いの、などと誰かに首を捻られたらご立派だ。大いに自信をもって良いと思う。ひととちょっと目線が変わったのだから。

 わたしは、この地上に存在するものの姿を借りて自分的な絵を描く、のが撮ることだと思っている。
 とはいえ、言うほど簡単ではないから困るのだが。

 それはともかくこの地上自然の中のものは、見慣れたもの、見過ごしているものでも、見方、距離や角度でかなり違って見える。
 多少でも撮ったことのあるひとに、こぉんなものがこれほどの絵になるとは思わなかった、と驚かれたらもう成功でしょう。

 自分以外の目が評価したということは、自分的な写真撮りの目、つまり個性が備わったということなのだから。あとはそのまま工夫しながら撮り続ければ良いのであります。




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