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夢舟亭/浮想記(随想)
      

  映画「アイヒマンの後継者」
                 2017年 07月21日日
 
 「アイヒマンの後継者」それはあなたかもしれない。
 
 そう問いかけているのは「アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発」という題名の映画だ。
 
 アイヒマンとは先の大戦におけるナチスドイツのヒトラーの片腕であり、あの非道残虐なユダヤ民族抹殺計画、いわゆるホロコーストの首謀者の一人とされた男である。
 
 彼は戦後スペインの地に逃亡し隠れていたところを捕まり裁判により死刑の判決となったようだ。
 
 さてこの映画は、戦後1960年代のある社会心理学者であるユダヤ系アメリカ人教授が、あれほどの非道な行いを、人はいかなる心理状態において行うのかまた命令に従い実行に及べるのか、という疑問からの実験を考案した。
 
 その実験の様子がこの映画に見ることになる前半である。
 
 つまりは、本当にあった話であり、ごく一般人の心理実験のレポートだ。
 
 顔こそ見えないものの壁の向こうに居る人に対し、こちら実験協力者のある行いによって苦痛を強いることになる。それはあらかじめ「大した苦痛ではないから」と知らされている。
 
 そしてその行為による叫び声も壁の向こうから聞こえ出す。
 
 その声に、さてこのまま続けて良いものか、と疑問を持つ。
 
 そんなごく普通の人に、実験を頼んだ教授は、大丈夫ですからさぁ続けて、とそっけなく答える。
 
 すると実験机に向かって、またスイッチを押し続けると、壁の向こうの叫びに慣れて来る。薄笑いさえ漏らす人もいる。
 
 たった一人だが途中で辞めた人もいた。
 
 その様子に、さて自分なら・・・とわが身をかえりみることになるこちら映画鑑賞者だ。
 
 こうしたことがあの戦時下の当時ドイツ兵も疑問した者もあったろうし、より効率よくと知恵を搾り上手に成し遂げては出世、地位をあげていった者もあったろう。
 
 アイヒマンのこうした指示命令を、当時の兵としてもし自分なら、拒否し得たかと、歴史資料にも残るアウシュヴィッツの惨さを思い重ね、戦慄を覚えつつも、あるいは・・、となるかもしれない。
 
 この実験のレポートが世に出てから、世界では賛否様々な意見が沸騰したようだ。
 
 テレビ番組”どっきりモノ”などとは異なる人類への厳しい問いかけのような思いを抱きつつ観終えたのでした。
 
 自分はアイヒマンの後継者などではけしてないと断言できるだろうか? と。
  
                <了>

            −*− 

 「アイヒマンの後継者/ミルグラム博士の恐るべき告発
 
 
 

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