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夢舟亭
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夢舟亭/浮想記(随想)
 
 
  日・米それぞれの「アカデミー賞授賞式」
                     2017年 03月13日


 メリル。きみは「誤解された」偉大な俳優で、仲間はみなあなたを尊敬している。
 
 と、アメリカの授賞式で司会者役が、トランプ大統領のあのツイター言葉をジョークにし、会場総立ちの拍手となった。当のメリル・ストリープもその意味を理解し笑顔で礼を返す。
 
 さすがに、自由の女神も掲げる民主主義のお国。
 
 さぁみんな手加減も遠慮もするな、とばかりに、大統領がトイレからツイートしてくるのを楽しみに、と場を沸すことを忘れない。
 
 アカデミー協会会長(それは女性なのだが)、この人もまた、映画に国境などありません、世界の映画人はみんな仲間です、と入国拒否令を批判。
 
 ほかにも、国や言語や肌の色で差別されることはない、と授賞の歓びに添える俳優、受賞者は少なくなかったのでした。
 
 最優秀作品賞発表のトラブルなどは、演出のひとつかなと感じるほどのもので、さほど重要には思えなかったのでした。いや、その事への関係者の対応の動きにこそ感心したほど。
 
 
 さて、わが国にも映画界関係者の栄誉を称えるアカデミー賞の授賞式があり、今年も行われた。
 
 式における、アメリカとの一番の違いこそが、先述べの俳優など関係者の挨拶ことば。その内容。
 
 少なくとも、私たちの貴重な税金を一銭たりとも無駄にしてほしくない、映画ほどにはファーストレディの言動はつまらなかったね、などと時事話題を皮肉る声はまったく、影も形も無かった。
 
 作品内容も、社会や政治への疑問や問題点をあぶり出し指摘するほどのものは見受けられなかった気がする。じつにコジンマリした庶民意識の枠内か。
 政治を揺るがすなどはもちろん、社会問題をえぐり出すなどという、人々の意識に影響を与える作品は無かった気がする。
 
 そうした作品を、観客の側が受け入れ歓迎する土壌があるかどうか、という点が製作者側の言い分ではあろうけれど。
 
 また、政治批判やジョーク歌でさえ押さえにかかる例もあり、映画となればリスクは高かろう。
 けれどそこを越える意欲があるかどうかと製作者の側に問いたいのも事実。
 
 
 両中継録画鑑賞のわたし的には、ちょっと淋しい花一匁、でありました。
  
           <了>

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 第89回アメリカアカデミー賞
 第40回日本アカデミー賞



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