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夢舟亭
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夢舟亭/浮想記(随想)

 ちょびヒゲ男 の映画2作品
                2017年 01月20日
   

 額に前髪のちょび髭男、といえば戦中ドイツのあのおっさん。
 悪名高き、人類史上最悪とまで、いまだに罵られつづけている痩せ男の、彼。
 
 揺れる今どき世界の政界に彼のイメージ臭を感じてか、彼を描いた映画が創られてた。
 
 とはいえ、例年行事となっているかのように、毎年「ナチス」や「ユダヤ」のタイトルや解説文の映画作品は生み出されてきている。
 
 ということで言えば今回のコレもことさら珍しくないのだが。
 
「帰ってきたヒトラー」、「我が闘争(若き日のアドルフ・ヒトラー)」の2作。
 
「帰ってきた・・」のほうは、いささかSFコメディっぽくどこかユーモラス。
 とはいえ油断禁物。ヒーローというか英雄というかへの期待はいつの時代の市民感情にもくすぶっていることを気づかせる。
 
 ましてこの場合は、すでに承知のあのおっさんだ。どこまでその出現を市民がホンキにしているか、いやほとんどが信じてやしない。
 
 だがしかし。コメディアンだと笑っていながらもじわじわと、彼のあの制服姿とちょびヒゲスタイルから発される熱ある言葉に・・・。
 
 
 
 さてもう一方の、「我が闘争」だが、これには(若き日の・・)と副題がある。
 
 ご承知のかたも多かろう。ちょびヒゲ氏ご本人が生前したためた半生の記録本、それが「我が闘争」であり、今でも各国で翻訳本は出版されているし、信奉者も減らないとか。そして同名の記録映画も過去にあったという。
 
 そこで新たに(若き日の・・)と副題付きで今回劇化、映画となったようだ。
 こちらはジョークっぽさのない無名時代の、まさに若きころの彼のもがいている様子。
 
 絵描きや建築デザイナーを夢見る誰からも注目されるなどない、ひとりの田舎の若者。
 付け加えるなら極めて貧しい夢追い男。当時かの国には、よく居たふうだが。
 
 そんな彼が失敗挫折のなかで、何かの拍子か勢いかで、身の周りのほんのわずかな支持者に担がれて・・・。
 
 
 以上2作品に吾輩の目が行ったのも、つまりは−−
 
 何というか、ローマ帝国ならぬ21世紀この地上アメリカ帝国時代の皇帝入れ替わり、端境期とでもいうか。
 それに相応しての世界をおおう暗雲といったものへの不安感から、か。
 
 何ごとも、大ゴトの始めを歴史で視れば、その初めは「まさかそれほどでは」「いやいやそこまでのものでなどありますまい」と眺めていた・・・。
 
 ま、そうしたものが我が脳内に無かったとはいえないからでありましたッ。
 
 議論無き社会、疑問を持つことが出来ない国は恐いですからねぇみなさん。
 

           <了>


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