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夢舟亭
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夢舟亭/浮想記(随想)
 

 
 
 
 「コンビニ人間」を読む
              2016年 10月24日
 

 言わずと知れた、アレだ。第百五十五回目の芥川賞受賞作品。
 
 前々回だったか、漫才師がとったが、今回はコンビニのアルバイター、女性。
 
 それも自分の職域を描いた。小説であってみれば、当然創作世界としてのお話。
 
 よく、作者の実生活と似た創作を、その人のホンモノが100%世界だと読む人が居たりするが、まぁだいたいは上手に変えたつくり話が普通なのだ。
 
 同じようで同じじゃないのが当たり前で常識な手段。
 
 そういえば歌世界などでも、とくに女性歌手など、歌詞はもちろん、仕草表情や衣装の派手さに、そういう人、人格なのだと早合点されがちだけれど、飛んでも八分歩って五分。
 
 あくまで、演技であり売らんがかなの演出。こちら文学文芸界もまた商売であってみれば、当たり前なハナシ。
 
 さて本題、コンビニ人間。
 
 大卒後即コンビニのアルバイト店員に。以来18年間、マジメひたすら24時間営業のあの光り輝くガラスの箱で働く女性。
 
 もう30代の中ば過ぎ。ほかの職場を知らない。そして男性も知らな〜い。
 
 というと誤解ありで、ほとんど興味なしが正解。
 
 であってみれば、当然というか、世間目で見れば、なんでぇ〜? の疑問符で皆に問われる日常。
 
 仕事仲間はもちろん友人たちも、結婚と子ども、への希望の無さに「?」をぶつけるほど。
 妹さえが、その気の無さには、一度診てもらおうよ、と。
 
 でもそういう、異質、な自分にはさほど疑問をもってはいない。
 ただひたすらコンビニ店に命をささげつづける。
 
 それだけに、コンビニ店の運営には目配り気配りが行き届く。
 コンビニの常としての、店長さえがすでに8名の代替わり、を見てきたのだから、当初の店員仲間も居ない古株のなかの古株アルバイターなのであります。
 
 で、ある日、そんな店に一人の年下の男性アルバイターが雇われた。
 
 でも、よくあるこのテの予測可能で想定内の話になどなったりしないのが、芥川賞作品たるトコロなのでした。
 
 その先はやはり読んでみるべし。
 
 それにしても、ついにコンビニのアルバイト店員までこの賞をとるところまでニッポンは来たかと思ってしまった。まさに文学は世に連れ、世を映し描く鏡なり。
 
 この話のなかでは、失業保険も年金や、収入のことさえも語られない。
 
 アルバイト人生では生計がたたず先が不安でしょう、と問われる側、心配される立場、作者がいうところの、社会的な異質の側に作者は居て語るのです。
 
 しかしながら、実際のところ当コンビニの正社員で構成する本社組織では、このアルバイター様を、今後どう扱ってゆくのか。
 
 そこにこそ本ネタがありそうで、想像を逞しくしてしまう読み手はわたしだけではなかろうと。
 
 さらには次回の当授賞者は、いったいどんな職種の人だろうと、そちらへの興味もまた一層かき立てられるという、新たな芥川賞への期待感に気づいたのでしたッ。
 

                <了>


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