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夢舟亭/浮想記(随想)
 
 
 


 「ギリシャ人の物語」と映画「300」
                     2016年 07月30日



 久方ぶりの新作をお出しになった塩野七生の「ギリシャ人の物語」、民主政のはじまり、の副題があるこの本を読んだ。

 このイタリア住まいのかたの著書には、「ローマ人物語」の連作があり、全ての道はローマに、のいにしえの彼方2000年もの西洋の昔を楽しんだものだ。

 図書館で先を争ったあれから十年ほども経ったろうか。

 なじみ深い文章、まさに物語というべき、”この点は資料がないので想像するしかないのだが”、からがまた楽しいのだった。

 なにせ今年は、オリンピックの年。
 いろいろあろうけれど、とにもかくにも近代オリンピックとして2500年前とおなじく4年に一度、このスポーツ競技大会が現代に生まれ変わり、何があっても継続している、ということもありその発祥の地ギリシャの歴史を興味深く読んだ。

 そしてそれより、紀元前数百年もの昔の民主政治とは・・・?


 とはいえ、題名のごとく「物語」であり、史実忠実型のドキュメンタリー作品でないことは前作同様、作者の目線で物語る。
 
 地名マラトンからマラソンの由来やアテネとスパルタの民主政治など、知っているふりしてほとんど知らなかった読み進みのなかで、おや、と。

 ギリシャへ攻め込んだ無敵の大帝国ペルシャ軍との凄まじい攻防戦。
 それは紀元前数百年ともなれば兵数体力が勝負の肉弾戦なのだが。

 そこに「300」という文字列。映画にもなっているという数行。
 いささか主役が若すぎる、とも、300対100万はいささか誇張などとも述べたこの章の映像化についての補足。

 それでさっそく、ここまで読み進んで描かれた2500年前の当時をすっかり想像しつつハマっていたのだから、観らざなるめぇとレンタル店にDVDを借りに走った。

 映画『300(スリーハンドレッド)帝国の進撃、がそれ。

 そういえばこれが店頭ポスターになっていたとき、なんとも凄まじい戦闘シーンだといささか眉をしかめた気がする。わたしの好みじゃない、と。

 しかし今、塩野ファンとしては、そんなことを言っていられない。
 なにせ今のいままですっかりギリシャの昔に想いを馳せていたのだから。

 とてつもない数のペルシャの侵攻軍を、ギリシャ連合軍(この場合はスパルタ軍)わずか300人が応戦した、知らぬは私ばかりナリのチョウ有名な、そしてギリシャのプライド、今にのこるスパルタの英雄、その死戦のドラマ化なのでした。

 その戦いは・・・と先を書きたいけれど、余白が尽きた。
 
 そんなわけでヒマワリとセミの声のニッポンの夏日、ギリシャを2倍は楽しんだというわけ。



              <了>


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