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夢舟亭
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夢舟亭/浮想記(随想)
 

 
  米映画「ハクソーリッジ」
                2017年 11月25日



 アメリカ制作の戦争映画。それも沖縄戦。1945年4月というから、戦争末期、終戦間近の4月。
 
 沖縄の島から始め、日本への上陸へ向かわんとするその激戦を、アメリカ軍側からの視点で描く。
 
 その凄惨さは目をおおうシーンが多い。
 
 何といっても、カメラが写し取る敵というのは、ニッポン人。
 日本帝国軍兵士たちなのだ。
 
 その”敵軍兵士”たちが、撃たれ燃やされ突き刺され、肉体が散りじりに吹き飛ぶ。
 そうした累々たる血肉肉塊の戦場を兵士たちは、阿鼻叫喚と銃砲の響きをものともせずに、走り進む。
 
 そして、一人またひとり、と前の後ろの隣の戦友らの頭部が胸部が足腰がぶちぎれる。
 
 昨今の戦争映画はCG(コンピュータ・グラフィック)の上質さによりきめ細かい、緻密精細なる凄惨さを観せる、というい点ではこの作品もまた、しかりだ。
 
 が、しかし、この作品の元目は、そこにあるのではなく。
 
 銃を手に取ることを一切拒否しながらも、衛生兵として志願した若者を描いていること。そしてそれは、真実の話、つまり現実に存在した男だというから驚く。
 
 この驚きは、一切の武器を手にしなかった当人はもちろんだが、よくよく考えてみれば、それを最終的に容認したアメリカ軍が示した人間への尊厳、人格や信条への許容幅にこそ、敬服せざるをえない。
 
 むろん、そうした判断を下されるまでには、嘲りや執拗なまでの命令不履行の当人へ懲罰などがあるのはいうまでもない。
 
 なにせ国、国民の威信をかけた戦争という歴史的行為であり、国民総出の犠牲を払った死闘のなかなのだから、個々人の主義主張ごときを優先するヒマなどまったく無いし許せない非常時。
 
 そうした軍隊最前線での戦闘行動の一兵士であれば、いうまでもない。
 
 しかし、本人は一切ひるまない、退かない、曲げない。徹頭徹尾、信念を崩さない。
 
 自分は人命を殺めない、と銃器武器を手にしないまま、戦場に出る。
 自分は銃器無しで戦うのだという。
 
 それで、仲間の命を一人でも多く救うのだという。
 
 そしてそれを実行することにこそ、命をかけるのだが・・・。
 
 
 そういえば、この主役俳優だが、前日記の「わたしを離さないで」「沈黙」の両作品でも名演技を見せた若き男優だ。
 また監督は、メル・ギブソンだという。
 
 ちなみに題名、英語の「ハクソーリッジ(HacksawRidge)」は、この沖縄戦での崖をいっているようです。
 
 
                <了>
 

 アメリカ映画「ハクソーリッジ」



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