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夢舟亭/浮想記(随想) アメリカ映画『ロング,ロングバケーション』 2018年 12月15日 ハリウッドが老後を描けば・・・たとえばこういう作品になる。 演ずるは”クイーン”で女王様になったあのヘレン・ミレン。 そしてドナルド・サザーランド。彼もまた多くの映画で見るアカデミー賞の名誉賞の人。 どちらも「ああこの人ね」だが、すでにこうした老境の演技の光る世代かと・・・。 とはいえそこはハリウッド。ジョークの尽きることないアメリカンなお二人のやりとりが、可笑しくも切ない。 ”老”というこのテーマに”最期”が見えはじめるとなれば、お国を問わずどちらにおいても、けして楽しく心安らかではないわけで。 つまるところは、万国共通の理解し易いテーマではある。 しかし、だからこそ、そこをいかに描くかが、製作者側の力量が現れるということもあろうか。 なにせ、主だった観客となるのもまた「酸いも甘いも知ったる世界の同世代。 で、当作品では、主役な二人のほかは、家族である子供、とはいえすでに中年の男女、と各旅先でのその他大勢さんたち、だけ。 ご老人夫婦のキャンピングカーの国内旅、ロードムービー仕立てで進む。 それら先々での出来事から、二人の置かれた背景が浮かび上がってくるのであります。 表面の行動言動と、内に秘めた真実な心象、その差異こそが大人世界かと。 ”老化”の先にあるものをテーマとした最近観た作品では、わが国の『わさび』の中の三作目「此の岸のこと」があった。 あの作品などは、いかにもニッポンらしい静かな現実的悲しさが描かれていた。 おそらく御同輩の方々も、一度はこうした夫婦先行きの不安にかられた方も居られよう。必ず訪れるそのことその日について。 ”老い”の先には”死”が。 それをいかに考え、いかなる思いでどう迎えるか・・・。 そういう深刻なるテーマをアメリカ的明るい空の色を背景に、素晴らしく地味な演技で描いたのが、この『ロング,ロングバケーション』なのでありました。 <了> −*− 米映画:『ロング,ロングバケーション』 |
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