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夢舟亭/浮想記(随想) 2015年日本映画「野火」 2016年 06月06日 この作品も国際的な評価の高い、2015年公開の日本映画作品。 作家大岡正平の作品「野火」の映画化はこれで2度目。 先日NHK-BS3で旧作、市川崑監督作品の放映があり観たばかりで、その衝撃はまだ残っている。 で、今回は、塚本晋也氏自身が、監督、脚本、製作、主演までやっている問題作だ。 そういえばこの作品上映となった時期に国内では、例の新アンポのデモ真っ盛りだったと覚えている。はたして上映までこぎつけるのだろうかとわたしは思っていた。 そんなであれば、出演を依頼しても断る俳優があったのではなかろうか。 それほどにこの作品は、原作は、戦争というものの現場の生々しさを描いて暴くのだ。 だから目も当てられないほどに人間を、その人体を無残にもあっけなくぶち壊しつくす。 であれば当然兵士という人たちの精神を、おぞましくも凄まじい野獣に作り変える。「人肉を喰らったかだってぇ? へへ、そんなこと・・・」と。 そういう状況をとことん描きつづける映像と対峙させられる1時間30分だ。 昨年、「戦争に行きたくないだけじゃん」とじつに軽くしたり顔した若い議員がいたが、じゃぁあんたこういう戦場に行く気になるかと問いたくもなる。 それほどにも、先の大戦で、「戦争に行かされた」先人たちは、すでに国対国の戦いなどではなく、射撃攻撃を交えることもないまま。 異国の小島で、ただただおのれの命の維持ためだけに明け暮れる。敵も味方も位の上下も無く、人間としての尊厳の誇りもかなぐり捨てる。口に運べるものだけのために。 観る者は、その惨さ虚しさ切なさ、悲しさに息をのみときに目を背け、吐き気にさえ襲われる。 その不快感こそが、一度起こしてしまったら行き着く先はこうなるという戦争そのもの、ということになろうか。 <了> 〇ご参考: 「野火」2015版 「野火(小説)」市川崑作品 |
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