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夢舟亭/浮想記(随想) 映画『ソ満国境15歳の夏』 2018年 08月13日 やはりこの季節そして”8月日本”となれば、終戦記念(敗戦記念)への思いははずせない。 そこで、この邦画、「文部科学省選定少年向き」という見出し付きの、『ソ満国境15歳の夏』を観た。 原作があり作者は田原和夫となっているが、わたしは読んでいない。 現代、今どきのフクシマから話は始まる。 そう、東電の原発連続爆発事故による避難者の家庭、仮設住まいの中学生らの様子から。 彼らは放送部のテーマとして、第二次世界大戦末期の満州への日本人移住者らを綴った一冊の本をもとに現地をたどる。 当時、満州開拓団という名目で、日本国内から移住者たちを政府が募った。各市町村へのその通達には人数の割り当て依頼もあった。国策なのだ。 思えば、他国への侵略植民地化による統治下にあった満州という現中国大陸の一部へ、楽園のごときコピーフレーズをもって政府は一般国民を送り出したのだった。かの地には日本人町村が造られた。 その移住先には、もちろん現地人が住んでいたのはいうまでもない。 けれどそれらの土地は、日本人が所有しては、住み着いてしまった。 現地人たちは、それらニッポン人の種々陰になって生きたようだ。憎まれないはずがあろうか。 日本での戦争映画やテレビドラマ、ドキュメンタリー作品の常として、この部分が省かれることが多い。 だから、著名人などの生い立ちが満州生まれ、とか、引揚者、などといわれても、イマイチぴんと来ない大人が未だに多い。 当時の植民地統治や満州のことなどほとんど分からないのだろう。 満州を語る場合、前述の移住先の一般日本人が、終戦時にソ連軍が攻め込んできて追い立てられ、命からがら逃亡行、そして婦女子らが犯されたことなどから先が多い。 政府が一般日本国民に行わせた、他国への我が物顔移住。その果てで発生した逃避の苦労は、現地中国人にはもちろん、ソ連兵らにとっても、悪魔を追い払うごときものだったのかもしれない。 もっとも、「文部科学省選定少年向き」とうたってある当作品には、そうした植民地政策云々は無く、逃げまどう日本人から先がこの映画のストーリーとなるのである。 現代フクシマの原発連続爆発からの避難者15才の子らと、あの当時の同じ年齢の満州移住先で生まれ育った子らが、故郷を奪われた、という共通点を子どもたちなりに、いかに考えるかということがテーマなのだろう。 子どもたちなりに、という「文部科学省選定少年向き」があることを忘れないでほしい。 戦争ものとなれば、苦しかった、悲しかった、辛かった、が大人向けにも表現されることがほとんどだ。 しかし大人なら、これに加えて、”誰が”、”なぜ”、”それを指示し”、”どう行った”、のかという点まで考えるべきは、いうまでもないはず。結果には理由があろう。 どうもそこまでの掘り下げがないままの、半端な戦争モノが多い気がするのはわたしだけだろうか。 そういう次元で言うなら、現代フクシマ原発連続爆発も、当時の植民地政策も、しっかりとした後始末は終えていない、ということは記憶すべきかと思うのだ。 <了> * 映画『ソ満国境15歳の夏』 |
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