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夢舟亭
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夢舟亭/浮想記(随想)
 

 
  韓国映画『あなた、その川を渡らないで』
                     2017年 11月23日
 

 時として、”やられたなぁ”と、観て思う映画がある。
 
 わたしの場合、そうした作品は、これって出演者はプロの俳優さんなのだろうか、と思うものだったりする。それほどその役に徹してしまっている。
 
 で、この作品。それもそのはず。
 
 この場合は、ドキュメンタリー。つまり実在する老夫婦を追った映像なのだ。
 
 98歳の夫、89歳の妻、その夫婦の生活。
 
 といっても、特別な出来事が起きるとか災難に襲われる、というのではない。
 
 そこが、”やられたぁ”とわたしが感じる所以。
 
 何気ない物事、その日常にこそ価値が潜んでいる。そこを見抜き見定め、描き出す能力こそに、わたしなどは惹かれ、降参する。
 
 以前に観て感動した中国作品「山の郵便配達」や、韓国の「おばあちゃんの家」なども、そういう類の感動を受けた。
 
 これらには、銃火器はもちろん砲弾破裂もカーチェースのブレーキ音もいっさい無し。
 
 ただ、ただ、カメラは人間だけを追い描かれている。何気ないそれら主人公の日常を、だ。
 
 で、当、韓国映画『あなた、その川を渡らないで』だが、主人公はなんともかんとも夫婦仲が良いのだ。
 
 韓国の衣装、それは普段着としてかとても綺麗なのだが、をお揃いで身に着け、お手々つないでどこに行くにも、一緒。
 
 老体の心配もあろうけれど、そうした日常に無理が無い。
 
 ごく田舎の古く小さな家に老夫婦だけの生活。
 
 人一倍モノカネの面で裕福というふうには見えない。
 どちらかといえば、”中”以下ではないだろうか。
 
 でも、日々に、老い先に、憂いることもなく、きわめてさりげない労り合うしぐさ物言いで過ごしている。
 
 韓国では、家族関係は今でもしっかり保ているのか、年に何度か、その家に巣立った息子や娘夫婦家族らが訪れ、礼を保ち食宴を交えてゆく。
 
 そんな春日向のような老夫婦だが、寄る年波は迫りくるわけだ・・・。
 
 
 欧米から数多授賞しただけの内容を、さて刺激の多い映像時代に慣れた感性で、どれほど共感できるかは、保証の限りではありません。
 
 
                <了>
 
 
韓国映画『あなた、その川を渡らないで』
 


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