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夢舟亭/浮想記(随想) 邦画「太陽の蓋」 2017年 03月20日 2011年3月11日からの5日間。政府や原発会社当事者たち、そして放射能からの避難やその脅威に困惑する国内市民をリアルにドラマ化した作品だ。 東日本大震災が発生し、福島第一原発で連続爆発が起こり、史上最悪深刻なメルトダウンが発生した。 その事による政府と東電本社と爆発の原発現場の未経験での混乱狼狽が再現されている。それも関係当事者の実名である。 ちなみに当時の首相菅氏を、俳優三田村邦彦がやっている。主役の記者は北村有起哉だ。 よくもやってくれたと、関係者に拍手を送りたい。 さぞや抵抗など少なくない中での実現だったろうことを、日本国の一市民として想像しうるのだ。 現に、当作品は「自主上映」の文字が公式サイトにある。 わたしはあの日以後、観たこのての作品は、すべてが自主上映となっていた。 こういう作品こそ真剣に観るべきなのに、陰でコソコソ観るようなあの嫌な雰囲気は切ないものだ。 上映鑑賞を希望する団体の要求への配給だということだった。 こうした、真に国民の困窮や恐怖、あるいは不安な状況を生むに至った経緯などの情報を、関係する団体や政治体制の利害損得、都合優先で隠そうと抑え込むある種の力が及ぶことは、わが国ジャーナリズム、批判的精神への理解などはまだまだだなぁ、と感じて悲しいのだ。 とくに政治や経済の大きな流れの中の、隠された真実追及や少しでも情報を共有しようという考え方へ、抑圧がはたらく社会はやはり後進国、低次元であり虚しさを感じる。 メディアではまったく紹介されなかったからだろうが、そういうわたしもTSUTAYAの邦画棚でこのDVDを手にするまで、当作品の存在を知らなかったのが恥ずかしい。 しかし、世界に見定める眼、確かな目線というものは存在するようで、カナダのモントリオールでの映画祭へ出品を認められたという。 少しでも世界人類が共有すべき、世界最悪の連続爆発原発の状況。それを知ってほしいものだ。 当映画では、テレビなどでは表せないそれぞれの立場の者の本音言葉が交錯する。 当時の首相にかぎらず、未経験の日本国存在の危機にまで言及した様子からは、あれから6年経った現在も実は改善されていない事が少なくないと知うるだろう。当時の事もまた、実は都の中心でさえ平常時の100倍の放射線量と・・・。 そして、福島第一原発4号機の燃料プール、その中の1000本以上の燃料棒への冷却水、それの停止枯渇の危機。 それは関東地域ばかりか、さらに国内ほとんどが避難地域化する可能性が論じられていた。 これなどは、地震大国の狭いニッポンに、現在も50基は存在していて、それぞれ未だ抱えているプール内へ思考を巡らせば・・・。 いったいどこに逃げれば安全なのですか!?と寒気も感じよう。 そう。兆円を費やしているのだから今ではそうとう片付いたのだろうニッポンは安全だなどと思う方々には、ぜひとも観ていただき、進行形の原発恐怖国ニッポンを肌で感じていただきたい。 まさに価値ある問題作品だと申し上げて、鑑賞記を終えたい。 <了> −*− 日本映画:「太陽の蓋」 |
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