・・・・ 夢舟亭 ・・・・ |
夢舟亭/浮想記(随想) 映画「わたしを離さないで」 2017年 11月02日 英国籍カズオ・イシグロ作の小説。 「日の名残り」のあの作家なのだが、こちらはがらっと舞台背景が異なる半SF。 ”半SF”とは、現代でもすでに十分可能なコトがテーマだから。 主人公も若く、女性。 現代のとある寄宿小学校から始まる。 彼らには親が居ない。存在しない、ということはもちろんなかろうけれど、どこのだれか、彼らは知らない。 試験管ベービー、クローン人間。そういうたぐいの生い立ちの子どもたちなのだ。 DNA、精子、卵子。その先の、親という存在を知らない子たちだ。 また、彼らは大人になることを夢見ることは・・・ない。未来が無いのだ。 彼らは「提供者」なのだ。何を提供する? 臓器を。 何度かの臓器摘出の後には死が待っている。確実に。 そうした摘出手術で弱る若い者を介護するのもまた、提供者の予備軍たる仲間だ。 幼いうちの彼らは寄宿舎で学び、巣立って社会にでて「提供者」に適した体になり摘出手術の連絡が来るまで、が短い彼らの人生ということになる。 その間の時の流れの主人公の、心の動きと同類の友人関係が描かれつつ、この小説は進む。 臓器提供者、としての宿命を受け入れつつも、出来れば少しでも長く生きたい、という思いをもつのは命あるものの本能か、その可能性が仲間内で噂される。 それは? この小説もまた本国イギリスで映画化されている。 こちらもまた原作を忠実に再現していた。 <了> . 映画「わたしを離さないで」 |
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