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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 



   『1R1分34秒』を読む
                 2019年03月30日


 第160回芥川賞作品、『1R1分34秒』(町屋良平)も読んだ。
 『ニムロッド』とともに本賞を受賞したのがこれ。

 題名は時間であり、ボクシング、その試合経過時間。
 
 陽の射さないアパート住まいの若いボクサー志願の男が、一勝二敗一引き分けの先に勝ちを目指し、身体を鍛えつつ練習に励む日々が当作品。

 したがってボクシング世界のコトが描かれている。
 リングでグローブを交わし闘った相手のことが、試合前はもちろん試合後も気になる思いは、読んでみてなるほどと思う。

 ジムを訪れる練習客たちの人間像もまた種々あり。
 ときにはそのなかの女性をも摘まむのは若者の常なのか。

 メタボ時代となれば、重量制限つまり体重制限を強いられる選手たちの苦労は分かる気がする。

 そうした中で、次の試合に向けてトレーニング指導の、トレーナーを代えられる。
 その人物との人間関係、練習や身体維持、そして私生活を管理される者としての思いが描かれる。

 これまで生きた過去ある一個の人間であってみれば、この先何かを行うにはそれへの期待も見返りも望もうこと。

 人間個々人が、あるときあるところで出会いあるコトを共有する。
 そこで発熱発火し何かが発生する。結果を出す。

 そこまでの過程を後戻りや後退などをどう描くかが物語としての味であろうし、読む者としては面白い。

 殴り合い、というスポーツ。ボクシングの一試合一試合の山を越えるための、スーパーヒーローなどとは異なる片隅の若い”汗”を、内側からながめる新鮮味さが記憶に残った。




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