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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


    小説 『PACHINKO』 を読む
                    2021年10月07日

 アメリカで話題の作品ということもある日本語訳の『PACHINKO』上/下巻、すでに読まれたかたもあろうかと。
 アメリカではドラマ化の撮影も済んでいるという。

 アメリカ出の小説作品ではあるが、話の舞台はこの日本国内。
 大阪を中心に横浜や北海道そして東京も。もちろんアメリカも。

 ただし主人公は朝鮮半島生まれの四世代に渡る人たち。
 二世代目の女性が日本に渡りその後の世代に話が続く。

 時は、1910年代から。といえば日本の占領統治下のころ。
 けして「日本憎し」が主題ではないのだけれど、歴史は曲げられず。
 それなりの半島人の思いその本音も・・・。

 青春時代を過ごした主人公女性は、訳あり身重の体で日本に渡る。
 大阪で、今で言う”在日(ザイニチ)”としての、家族個々人の生き方。
 その家族の、世代を継いで描かれるストーリー、それがこの小説の主題なのだ。
 
”在日”とは、現在でいう南・北の朝鮮半島出の人たちであり、それは日本国籍に入らないままの人たち、を言う。

”入らない”という言い方この裏にあるものは、現在未だに未解決なまま。一口に説明しかねるものがある。籍を得たくとも・・・。
 アメリカなどよりも、帰化し国籍を得にくいのだろうか。

 現在も海外から来ている人に対する日本国の扱いの不手際報道があるようだが、とくに周辺アジアの人たちへの、複雑さ難解さを表していないだろうか・・・。

 また、日本列島人の民族意識とでもいうのだろうか、日本人社会でのわたしたちが無意識に抱いて示す人間関係は、彼らを区別し敬遠し排除ぎみの言動に至ってもいるのかもしれない。

 そういうなかで、彼らは世代をまたいで、努力や能力を活かせずに苦しんでいるようなのだ。

 そこに 『PACHINKO』という主題が関わってくるのだが・・・。

 国内の有名な作家たちもかなりの絶賛をこめて評価しているこの作品。

 近年の国内作品にはない世代を次いだスケールの大きなこの上下巻を、夢中で読み進んでしまった。そして興味深くも考えさせられたのでした。




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