・・・・
夢舟亭
・・・・

夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


   米映画『アメリカン・アニマルズ』
                   2019年12月05日


予告編の印象とはかなり異なる、まっとうな作品でありました。

強盗もの、というならブルースウィリスやシュワちゃん、古くはイーストウッドやハックマンなどが、スクリーンいっぱいに痛快に暴れまわるもの。

そんな期待をもっての爽快さを味わうつもりなら当作品は・・・。
見事に裏切られるのです。

しょっぱなに「事実をもとにした作品ではありません」とあり、続いて「事実そのものなのです」とくる。

4人の大学生。ごく一般的なアメリカの地方大学の生徒。
若者の常といっていいかと思うが、単調で平凡な生活に、不満足。
「できれば何かパーッと行きたいね」の夢逃避なども、まぁフツウといえば並の思いか。

で、何をやる?

それが映画題名の『アメリカン・アニマルズ』というかなり高価な歴史的な一冊の動物図鑑本。
図書館の特別室のガラスケールに厳重に保管展示されてある。それを・・・。

「へい。やったろじゃネーの」

と、あれこれ策を思案考案、工夫。
若者としては目標が定まれば突っ走るのも万国共通か。
ここまでは、よくあるインターテイメントなアメリカンムヴィーの序。

この先で大概なら、覆面や銃など用意して、ハイカラなクルマでその場所へ押しかけたり、真夜中を狙っては器用に鍵を開けたり・・・だろう、けれど。

なにせ当作品は「事実もの」。
となれば、そうそうカッコよくは、行かないわけで・・・。

「事実」なるがゆえ常人なりの尻込みなども隠せない。ことは犯罪なり。

時々スクリーンに顔を出す、「事実」のご本人の正直なところを振り返るコトバと表情に、それが現れて見える。半ドキュメンタリー。

そんなこんなの、ネタはここまでとして。

男4人寄れば、の当一件に踏み出した時点で、失敗ならもちろん、たとえ成功したところで、若き彼らのこの先の人生は・・・。

スクリーンからこちらの現実社会においては、非常人、いわゆる「罪の人」との烙印が押されるわけで。

わずかな気の緩み浮つきが、どのような人生路を選んだことになってしまうのか。
この社会が彼らにはどう見えていたのか、それほどにも甘く愚かでいい加減な人が生る地上に見えていたのか。

この暗黙の問いかけがあるから、派手なハリウッド的予告編とはしっかり一線を隔す、のではありますまいか。





・・・・
夢舟亭
・・・・

・・・・
夢舟亭
・・・・

・・・・
夢舟亭
・・・・

・・・・
夢舟亭
・・・・
[ページ先頭へ]    夢舟亭HOME    「創文館」    「随想」目次