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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 
   『アンソーシャル ディスタンス(金原ひとみ)』を読む
                      2022年 06月 105日


 2003年にたしか17才で『蛇にピアス』芥川賞受賞の人。
 話題になった少女世代ダブル受賞も、すでに20年前。作品は映画にもなった。

 そして今、作家ご当人も30代。
 で、この作品かと、さすがに高齢読者としては、描かれたその世代人の生活状況に目を剥いてしまう。
 もっとも、小説を読む楽しみは、そうした異世代世界を覗き知ることにもあるのではあるが。

 まさに今どき「コロナ禍」若者サラリーマン(ウーマン)世相を、この作家色の目線で切り取るようにストーリー化する。五話の短編集だ。

 まずは「ググる」「バグる」から「コスメ」「セレクトショップ」などのカタカナが。そして化粧品名の数々は想像の域もをはるかに超えて、着いてもゆけぬ。
 とくに若さ美顔に執着する一編は、お定まりか整形にハマり、泥沼化の様子まで。

 かように若者言葉で書かれているのに、私などでも読み進められるのは文の巧みさだろう。

 他編も女性がわからのお話となっていて、外出制限もテレワークも。
 とはいえ、都会暮らし若い女性の独身私生活が、今どきこうしたものが平均かとは思えない。思いたくないというべきか。

 そこにこの作家の特異性があるのだろう。
 その内容の特異性はといえば、”食”そして”性”への執着もハンパでない。

 いやこぉんなことって当たり前です自然な若さです、と言われそうだが。

 さらに感じるのは、全体に通じる雰囲気。鬱屈さというか閉塞感というか。晴れやかさとは対極。
 思えば、これは『蛇にピアス』にも通じているこの作家独特のものかな、と。

 今どきの若者は楽じゃないんです、かように人間関係は味気ないんです、とも読めてしまうこちらが前時代人なのだろう。。

 と、複雑な時代感覚を思い巡らしたのでした。









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