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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 



    『晩鐘』(佐藤愛子)を読む

                    2022年05月22日


 90歳を迎えた女性作家の作。
 毒舌などといわれていて今、己の人生路を振り返り、小説に。
 それが波乱に満ちたものかどうか、どこまでが真実かは、読者それぞれの経験則によろう。

 戦中は十代、戦後77年を敗戦国の民として生き、良き作を書き綴る人生にこだわってきて。見合うほどの誉れを名声を得るに至る。

 主題私生活では、平和国家途上の女性として、書く情熱を抱く同類同好の男と家庭を。
 彼には昭和の作家魂。それは現代のおしゃれなものでも娯楽性もない哲学的で、かつ濁りが巣食う。元に幼少期から身体的な欠点が精神を染める。

 そんな男が理想とする、書く意味、その道への追求の姿に憧れ、惚れて。
 書き綴るに専念するでもない、けれど書くときは書く彼ではあるが、やがて金銭トラブルが高じて別居。
 さらに別家庭をもつに至って愛想をつかした、ふうに見えてなお生涯資金ほか支援を続ける。
 彼女のそうした生き方を、それぞれに名をあげてゆく同人誌作家仲間は、その時々に賛否の声をおくりつつ、そうした絡みの年月でページは進んでゆく。

 本来フィクション小説読みがほとんどの私は、背表紙「晩鐘」を見て、高齢作者の意図を勘ぐった。毒舌気ままなエッセイか、と。

 しかしながら読み進むにしたがって、知りもしないでいた作者の気強い性格を表していながら、裏腹に女性の一途さを、そして深層に潜み行き方に影響を与える育ち期の人間関係や大小事々その複雑さを、描かれた彼の生き方から読むこととなった。



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