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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


  映画『ベイビー・ブローカー』を観る
                    2023/02/12


 けして大歓声に沸く大衆受けする娯楽ものではない。
 ラストシーン以後に残るものがあれば、私的にはマル。
 ということでこの映画、イイのです。

 是枝監督といえば『万引き家族』が世界的にも知られている。
『誰も知らない』。『そして父になる』など”家族”ものが多く、『海街diary』もそうだった。

 家族、をテーマにとはいえ、この監督の目線はどれもなかなかに、フツウじゃない。
 そこが見応えアリなわけで。

 お題、赤ちゃんを売買する者、からいかにも是枝監督らしいと思った。
 さらに、韓国で制作と知り、また興味が増す。
 主演の韓国男優がカンヌ映画祭で、主演男優賞となれば更にまた。

 観れば例により、ハリウッド娯楽ものの多くのけばけばしさとは異なる、ありふれた若者らと中年のやりとり。

 雨の中で濡れる二十歳そこそこのか細い女性が、街の片隅の建物の窓の下に、赤子を置いて去るところから、開幕。
 これまでも何度かあったことだろうそれを、待ち受ける者と、それを監視していた者。
 ベイビー・ブローカーはどちらか……。

 そこから続くストーリーは、まさに家族とは親子とは、それを持たない、知らないままの人生とは。
 どうじに、こうした幼児放棄や売買、あるいは臓器移植などへ繋がる闇取引は世界でどの程度あるのだろうか。アジアは多いのかなどなど、そういう諸々を想起させずにおかない。

 この作品がなぜ韓国で制作なのかということが、それだからいい作品になったという気はするものの、ちょっと気になる。
 主演俳優(ソン・ガンホ)は、米国のアカデミー賞やカンヌ国際映画祭での『パラサイト 半地下の家族』でも知られた顔の名優だ。
 けれど、こと韓国と中国作品となると、BTSなど音楽にしても、わが国ではメディアに扱われ難いようだ。世界的な視野のファンには、もったいなく惜しい話である。

 是枝監督の次作にもまた期待したい。


                 <了>






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