夢舟亭 創文館(随想・エッセイ) 雑感フクシマから 2023/03/11 どの程度の現実性をもつかは別として、仮に避難計画があったとして。 突発的な、住み慣れた地を即離れろとの声に、さて何をどうすればいいか……。 家族に降り掛かったそのような大きな出来事には、言葉もなくただ右往左往し、クルマを走らせるも、いったいどこへ? とりあえず、と逃げて行こうにも、すでに放射性汚染物質は大量の放射線を放ちながら、家屋にいようが車中だろうが襲いかかる。 逃げようもない”これ”こそが放射能の怖さ。 その後ずっと生命体に影響を与えつつ蝕ばむ。 いったいどれだけ浴びているのか、自分たちにとってどれほど危険かが分からない。 分からないけれど確実に存在する。 世界が認める脅威。いや第一に、この国の実例が示す。 混乱混雑のなか、どこまで離れれば良いのかなど、知りようも測るすべもなく。闇雲に逃避行を繰り返す日々。寄る辺なき放浪が現実に。 避難受け入れ地などをたとえ知っても、向かう地への経路を確保できる保証は無い。 混乱混雑の長蛇。燃料も奪い合い。空腹だとてナンバープレートから「あちらからの客お断り」。 受け入れ先了解ありと、着けばせいぜいが体育館など。 複数家族、多人数が雑魚寝。ダンボールの仕切りがあれば良いほう。 食はあっても、日々三食おにぎりや弁当ペットボトル冷茶。 もちろんトイレや風呂シャワーほか、プライベート確保などままならず。 それらさうえも、はて何日続くか。泣いてみたとて贅沢いえず叶わず。 受け入れ側とて、場所や人手の配慮に限度もあろう。忍耐も予算も業者も限りあり。 自宅へは、基本的に戻れない。 最悪は、二度と戻れないと言い交わし、いやそこまでは、と慰めあう。 やがて仮設の狭い小部屋を。 ここで数年か、最悪は帰るもままならないかも。 日が経つにしたがい、衣・食・住・職・学、そして金銭。 先行き細き、不安は増すばかり。 もんもんと、見知らぬ土地での籠り生活果てなく。 その生活の立て直しは、ほぼ不可能。 家族離散の別居で、家族不和も限りなく。 それぞれの精神的ダメージから衝突の罵声までも。 そうして過ぎれば、体は鈍り心は萎える。 運動不足にやけ喰いヤケ酒。 当然の生活習慣病。 旧知友人とも離れ離れのまま、行方知れず、音信不通。 風の便りで、あの老い人が孤独死、若いのに自死までも。 大元の原発は、技術立国の声高き総力をもってしても、押さえられず防げず、あれよという間の連続爆発。 無力感が被災者にはもちろん、国中を覆った。 世界の眼が耳がフクシマへ。 とはいえ、あれでも不幸中の、幸い。 原子炉そのものの爆発は免れたのだから。 それはしかし、自慢の技術的対応の結果などではなく。 まったくの幸運という背筋に冷や汗もの。 下手すれば、狭いこの島国の少なくとも半分は、住めない避難地域に。 となればある程度の海外避難もあたろうという。いわゆる難民に。 でも、どこへ……。 戦争でさえ山野までも奪うことはあるまいに、原発は国を失う。 脱炭素社会とは、自ら国を失うことと表裏の危機を孕む。敵国より残酷で怖い。 さて、さて。今度起きたら、どの程度に及ぶものか……。 政府はもちろん、IEAEも原子力規制委員も、起きてしまった放射能汚染物質の拡散地域を、もとに戻すことはできない。 つまりは「責任をとる」ことなど到底出来ない話。そもそも国民の生活基盤の総てを元に戻せない「責任」とはなんぞや。 多くの国民が、原発は、生活を奪うことは出来ても二度と戻せないもの、としかと見届け、学んだ。 ここに至り、美しきふるさとの再生は不可能、と深くふかく認識。 だのに政府は、「帰環を許し」、「帰環指示を下す」、と、上から、下す。 裏付けもなく根拠も明言しえず。 線量など公表もできず。 国際的線量基準など素知らぬふう。 その怪しさ不気味さに、帰還者は極少、不信感極大。 各地の放射性物質飛散による除染物質の大袋、その連なる山積を県外処分と約束されて10年を越えて未だ、行く先不確定。 ここでさらに、海水汚染を理解せよなどと説得する政府、大臣ら。 倒れた者へ、更に追い打ちの蹴りを加えるは、鬼にも見えよ。 そもそも、国家全体で分担解決すべき大事であり、当事県民だけに判断を迫るなどは、あまりに差別的脅迫的な政治権力。 悲嘆に暮れ苦しみ悶える自国民をよそに、さらに苦しめる政権は。 この12年間に、何ほどの反省と脱原発の策を検討したか講じたか、はなはだ疑問の電力事業社は。 先人らが膨大なカネと時間をかけた負の遺産50数基。今さら巨額費用と時間でして無かったものにしようもないのが本音。 さればと再稼働やエネルギー云々、のその前に。 核の脅威が叫ばれ、原発こそ格好の標的餌食とミサイルに在処データをセットし構えて脅すは、SF映画などではない今世界の、権威主義国ら。 ユーラシア、アジア大陸の極北端、狭く細い列島国土に、さてさて明るい未来があるといえるのだろうか。 <了> |
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