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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


  白鳥を弾く
        2021年 07月17日


 いよいよ夏、到来!
 そんな猛暑時に、冬の渡り鳥のお題。

 サンサーンスのあの曲。”白鳥”をピアノ演奏して飛ばそうか。
 外出控えの今、そんな思いになって試みたしだいです。  

 わが地方にも”梅雨明け”の宣言が発せられました。
 とはいえ感染ウィルスが世界を覆っているこの夏。
 爽快に晴れ渡る気分を味わうこともままならないわけですが・・・。

 自室の机上のパソコンから振り向けば、そこには巣立った子どもたちの汗や傷あとのついた、黒く光るピアノがあります。

 なんとも邪魔っけで目障りで、じつに大きなこの図体。
 これを処分できないものかと思い続けていたのでした。

 あれは定年退職間近のある日ある時。
 何気なく、開かずのホコリ蓋を開けた。

 人差し指一本で白鍵を、ぽ〜ん。
 ふうぅ〜ん。

 まもなく”大人のピアノ教室”へ出向いた。
 それ以来、ピアノは葬られもせず場所も変えず。そのままの位置に居続け。

 月2回ほど、一から習って、日々独習。で、今に至る。

 演奏する曲は自分で選び、その要点だけ指導を受ける方式。
 この受講スタイルはお仲間皆おなじ。
 年一回の発表会は仲間内30名ほどの場となるが、これがまぁ緊張するったらない。

 クラシック定番のピアノ曲から、映画音楽や誰でも耳にしたはずのフレンチポップスなどなど。
 皆が、思い思いに曲を選び楽譜を準備して、延々と練習を重ねてくる。

 わたしは人様に聴かせるつもりなどさらさら無し、の受講だけれど。やはり拍手は嬉しい。
 だから必死に独習し続け最後まで覚え、一曲を完成させてきた。

 昨年はさすがに発表会は中止。
 わたしもほぼ一年間休ませていただいた。で、今年から受講再開。

 今回のわたしの選曲は・・・。
 この初春に旅たって秋には戻ってくるはずの渡り鳥、白鳥。
 サンサーンスの”動物の謝肉祭”のなかの1曲。
 本来はチェロの演奏。
 バレエの大家が”瀕死の白鳥”とした、死を目前にありし日を思う白鳥の舞いも有名になった。

 白鳥、についてはわたしは人一倍思い入れがある。
 毎季の飛来が楽しみで、傷ついて飛べない白鳥も眼にのこっている写真撮り人なのです。

 ま、そんなわけで、猛暑の今も日々独り黙々と、白と黒の鍵盤の上で苦闘しつづけ。
 夏に白鳥の飛翔の様を音にせんと、涙ぐましき挑戦をしているのでございまする。

 そうそう今どきはBS−1で、駅や空港、街角ピアノの放映があるけれど、わが国のピアノ弾きとあちら欧米のとでは、生活のなかの音楽の位置づけがちょっと異なるかな、と感じます。

 ま、いずれにせよわたしは素人っぽいほど共感をおぼえるのでございます。



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