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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 

  「ハンチング」(市川沙央)を読む
              2023/09/29

 話題の、そして問題の作品。とはいえ犯罪物などではない。
 しかし文学作品としては、まして芥川賞など純文学作としてはそう思う。

 作品内容が100%作者を描いているのかは分からない。
 が、近似したものだと、主人公がおかれている、生活行動もママならない身体的制約の描写、そのリアルな文面から感じるのだ。

 身体的不自由さを抱えているこの作者は、先に「文學界」新人賞をも受賞している文学的能力の持ち主。

 もっとも、作者から言わせれば、そうした立場の作品がこれまで少なかったことこそ時代や社会を写すべき文学世界の問題点とも見ているようだ。
 実際読んでみても、こういう立場からの状況は新鮮≠セった。
 つまりは少なく、珍しい。
 とはいえ読み中毒とまで言えない程度の私などが、そう言えるかは置いておいての話。

 私だけかもしれないが、身体的な不自由さをもつ人を、精神面においても不自由に思ったりすることがある。
 だが、不自由さのなかでも、いやだからこそ精神の成長、その鍛えられ方も行動意欲もまた、人それぞれであることは受賞の実際が物語る。

 当たり前ではあるが、身体的な制約のなかでもそのことを、私など身体的自由さを持つだけの凡人≠ェ、再確認するこうした作品はありがたい。

 で、作品内容だが、当然、性的な変化成長もあろうし、それが単に生物的子孫継続欲求からというだけでないのはいうまでもなく。

(作品の内容は読むに限る)

 気の毒だなぁ、大変だろうなぁ、という思いは、受賞報道の様子にもあった。
 読後の思いもそれは変わらない。
 それだけに、この作品の重さをひしと感じるのだ。

 今後はどういう作品を出してくるのか、強く興味が湧く作者だ。



              <了> 
 






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