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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 

   『奔流の海』(伊岡 瞬)を読む
                       2022/09/24


 家族、とひと口にいってもこの日本列島1億数千万人、それぞれの組み合わせは様々。
 そのなかで”DV”、とくに親どちらかが非血縁関係による家庭内暴力からみの事件は報道によく見られる。
 この小説もそうしたお話。

 主人公の青年は幼いころから、父に”当たり屋”の被害の子をさせられていた。
 走ってくるクルマの前に押しだされ事故被害者になり、加害運転手となった人に金銭をせびる。
 当たりどころが悪ければ命の危険も付きまとうそんな役回りを我が子にさせるのは、それなりの思いが父親にはあるのか。愛情は極めて薄いようだ。少なくとも母親よりは。
 その母との血縁も、実は……。
 そこにはそれなりの曰く因縁があるのだが。

 書かれる話の流れは、主人公の青年の幼少期や青年期へと、時を前後して進む。
 主人公の数奇な人生の流れが複雑に描かれている。
 同時に、似た者同士の人間の交わりが小説ならではの、ではある。
 そうした様子がどちらかといえば風俗業などの裏というか夜というかの、業界が多く描かれている。

 それにしても現代社会の家族関係は、何らかの事件や出来事に巻き込まれたとき一見事なきを得かのたように収まっても、実は先々、取り返しがつかないような結果がその裏に残ってしまったりするのかもしれない。

 そんな思いを抱かせる小説でした。
 







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