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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


   『人生の成就』(深田展人)を読む
                    2022/08/25

 どこか人生哲学的か宗教的な題名。
 手に取ったときにそう感じた。

 でも小説でありフィクション、物語。
 ここでいう”人生の成就”は、国家的一大事業につけられたプロジェクト名。
 時は、2090年のころ。未来のある国。限りなくニッポンっぽい。

 長寿命な老人たちが、認知症や不治傷病のまま数多生きながらえて、国費や社会、人手の負担になっていた。
 そこで、国は経済的人的負担軽減の策はないものか……と。

 そんな中、脳への直接刺激信号を送りこみ、夢見、望む想像人生を想像体験しながら、死へ送ることができるアイデアをある脳医学者が研究。
 それを見出されプロジェクト化され、実施に移された。。

 となれば全高齢者を対象に、家族の幸せで理想的見送り方である、というフレーズで制度化し社会に定着。

 ある年齢に達すれば皆が、老化状況を検査されそれぞれに相った幸せな最期プランを選択、申請し想像幸福の先の、死の道程へ向かう。それが『人生の成就』プラン。

 本人がどう思うが、社会の同調圧力からそう従うのが当たり前、拒否や不安などは反社会的。そのような未来社会の話だ。

 ほか詳細は読んでのお楽しみ。

 高齢者増と少子化の巨大債務社会という今どき読むに面白い内容ではある。

 私は読み進めていて米映画『ソイレントグリーン』を思い出した。
 死を前にして、幸せ感を抱く夢世界を見つつ逝く、というてんは同じ。
 食糧難社会のあちらは、その後の死体がソイレントグリーンの食品になるのだったか

 そしてどちらもが、そうした強制的体制に疑問をいだき、立ち向かう者が現れるというてんで同じ。
 その経過を読む者観る側が楽しむのがこの種の物語の楽しみ。
 私も大いに楽しんだ。

 とはいえ、こうしたフィクション、創作物が必ずしも100%娯楽話か、といえば……。

 形は代われど、制度化を敷き、半強制により、民を欺く美名の仕業や仕組みというものは、世界の古今東西、また身近にも、現存しはしまいか?
 それにより、国家の規制創設の上位人の都合のためではあっても、実は国民にとっては、ただの苦しみ。
 身近にそうした亊は無かろうか? あれはどうだ、これははたして、と。

 こうした物語の多くが、そうした疑問を少なからず投げかけてくるものだ。
 だから面白くも興味深いのだと思う。






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