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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 


   『貝に続く場所にて』を読む
                     2021年09月28日


 2つが授与した第165回目芥川賞作品、そのひとつ。
 この『貝に続く場所にて』は、宮城県仙台市の読書家庭に生まれ育った石沢舞衣さんのもの。
 1980年生まれ(41歳)で地元大学院を経てドイツ留学という経歴。
 
 宮城県といえば東北。
 あの2011年3月11日の、東日本大震災の被害が大きかった海の地域。

 小説の主人公の女性、それはほぼ等身大の自身なのだろうが、あれ以後未だに帰らない大切な友人、恋人だろうかその面影を未だ生きているかのように、死を認められずに交友を語り綴る。

 生きているかのようにとは、今日も昨日も、おそらく明日も、遠く離れた地ドイツの街に居てさえも、姿を認め、出会い会話する。

 それを周囲の知人友人たちも共有している、かのように。

 心にあるその友人は、おそらくは海にのまれ戻ってこないのだろうとは思いつつも、確たる証明しえない限りは、認められないのがこうした被害者たちの割り切れない本音なのだろう。

 あの日以来、日々胸にうずく思い出、その人の様子が今も生きているかのように、いや生きているとして幻影を夢想し追い求める。

 貝に続く場所、とは行方不明のままの友人に続く海ということなのであろうか。
 それにしても、かなり難解な文章ではあった。
 そうとうに頭の良い作者なのだろう。


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