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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 

   『クララとお日さま』
          (カズオ・イシグロ)を読む
                    2022/08/17


 英国に帰化したカズオ・イシグロ、ノーベル文学賞作家となって後の作品。2021年の訳出版。

 AIといえば人工知能のことだが、未来のロボット、クララが主人公。
 彼女というべきか、半生というべきか、がストーリー。

 詳細は読んでのお楽しみ。

 この人の作品では、『日の名残り』『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』も読んでいる。
 先の2作は英国で映画化され、観てもいる。
 今回の作品はちょっと『わたしを離さないで』に似ていた。
 人間社会において、科学的に非人間なるものを”人間のため”に生み出して利用するという面で。

 今回の場合は機械であるが、AIも進んで感情をもつとなれば……。
 そこが眼目ということになろうか。

 機械的正確さと善良なる情感をあわせ持つ女の子ロボット。
 多くの商品とともに店頭に並び、買い手がつくのを”心待ち”に会話する。
 新型、旧式などと後先の別はあろうけれど、やがてクララも。

 その後の買われた先での、家族との生活と人間と機械の関係が切々と語られ、やがて……。

 今21世紀頭に生きる人間私なども、身近にあふれる大小便利な生活用品類に囲まれ助けられ、多くの時間を共に。
 それらとの思い出は当然少なくない。
 だから、断捨離などという整理言葉を目耳にしても、易々とは手放せないもの。
 品々に感情などないけれど、やはりそこには忘れがたい離別の寂しさが、思い出とともに湧くときもまた。

 などとは思いつつも、気づけば新しいものが入れ替わっていて、古いものはいつ手放したっけ、と。

 であれば、この先未来のAI感情脳をもつロボットなら、それらとの生活はもちろん、別れる時は、と想うのも当然か。
 ましてこの作品のような出来事の後では。

 そういうことを種々思い巡らす、この作家らしい作品だ。




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