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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 




   「おらおらでひとりいぐも」読み そして観る
               2018/03/15−2021/07/01


「おらおらでひとりいぐも」とは、私はこの先自分独りで生きて行く、けれど・・、といくらいの意味の、老女のつぶやく東北弁。

 だから、地域性はもちろん、年齢的にも人生路の面でも、東北のわたしは男老なれども、かなり解る。

 つまり共感度の濃い、昨今の同賞作品には稀な内容として、おもしろく読めた。

 おもしろく、とはいえ、わが国新人作家登竜門第一の芥川賞、その第158回受賞作だけに中身はホンモノ。けして”綺麗ごと”を綴られているわけではない。

 東北は岩手に生まれ育った女性主人公が、よい子の皮から飛び出し単身上京。その後のご苦労から、家庭をもち子どもを育てあげて。

 七十路にして夫に先きただれて十数年の今、築四十年ほどの自宅に独居の日々を送っている。

 そのなかで独り言として、過去それぞれの時の、自分と知人と家族と他人との言い交わす思い出の事々が、おもしろい。

 そこにこの小説の味があって飽きさせない。

 よくも難解になりがちな東北コトバをもって、しみじみとそしてときに力強く、かつユーモラスにしかに克明に、現代社会の一生活者、おひとり様を描いたものだ。

 けっきょくは大切なのは自分自身であり、「おらはこの先も自分独りで生きて行くさ。んでも・・・」、という人生、この先への思い。

 これに共感できるご諸兄姉がたは当SNSに少なくないとおもうのだ。



          −*−

   映画「おらおらでひとりいぐも」を観る
                      2021年07月01日

 先に書いたように、『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子)は2017年に芥川賞に選ばれた小説。

 今回映画化となったのを知っていたが、あまり邦画は観ないので目にするのが遅れたのかな。

 ひらがなのタイトル『おらおらでひとりいぐも』は方言で老語!?
 方言とはいえ、主人公は現在関東圏の住人となっている。
 若い頃に都会にあこがれて家出。
 住み込みで働いて同郷人と結婚。
 2子をもうけ家をもち、フツウの生活。そして巣立たせて・・・主人を亡くし。
 とはいえ不自由の無い老後を送っている。

 で、この不自由の無い老後、がテーマ。
 芥川賞といえば純文学の新人実力者のものだけれど、この作品はなかなか楽しい。
 老境における独居生活のなかの”今まで”を想像世界とまじえて描かれる。
 想像世界とは、老脳が描く世界かな。

 さて出演者はといえば、田中裕子。おしん、の成人後の人。この役にぴったり。
 ほかには蒼井優。若い頃の主人公を。

 え、この人もぉ、という脇役が楽しいです。

 まずは観てのお楽に。
 同世代のご諸兄がたには、うなづきクスリと笑むこと少なからずかと・・・・・・・。



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