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夢舟亭 エッセイ 『サラの鍵』を観る 2022/12/03 ユダヤの民の地、といえば今ではイスラエル国。 でもそれは先の世界大戦が終わってから得た地。 それまでのこの人たちに国土は無かった。 周知のごとく、ドイツやポーランドやロシア、イタリアほか、多くの国に住んでいた。 この人たちを排除迫害の風潮は昔からあったようで、それは”ベニスの商人”や”屋根の上のヴァイオリン弾き”ほかにも表されていたりする。文豪の作品でさえ良いイメージではなく。 この映画『サラの鍵』は、フランス住まいのユダヤ人たちへの強制収容に関する戦中の話。 強制収容、といえばドイツやポーランドで、が有名だがここでの主人公少女”サラ”の家族はフランス、パリ住まい。 両親と弟との4人家族がアパートで。時は1942年、終戦まであと3年。 ここでも一斉強制検挙のため捜索が、この場合はフランス警察により行われた。周囲のフランス市民たちも、協力。そして収容所へ集団輸送。 到着後、老若男女それぞれ別監禁。当然家族は離別。死の収容所だ。 映画の題名『サラの鍵』は、少女サラが肌見放さず持つ鍵のこと。 それは強制検挙される寸前に、アパートのごく片隅の物入れ収容物の中に、幼い弟を隠し閉じ込めた、その鍵。 迎いに来るまで静かにしててね、と言明された弟は家族三人が連れ去られた後もそのまま、のはず……。 この後、サラの弟救出に向かう命をかけたサラの行動が本筋。 収容所脱出から、その後アパートに戻り着くまで。 逃避行その道程、幾多の人と出会い介助の手も。 60年後、21世紀現代。 フランス人女性ジャーナリストが、ドイツ戦領下のパリの、自国警察や市民がユダヤ人を、いかに扱ったかを取材する。 それにより当時のサラ家族は身近にあったことも知り、足跡を追う思いに熱がはいる。 国を越えての旅を続けるなかで、自らも反省。とはいってもそれは当時の自国民、家族、大人たちの行いではあったのだけれど。 これらはフランス小説の2010年映画化。 ユダヤ民族絶滅作戦に関する作品でいつも思うのは、戦中当時、周辺隣国を侵略、植民地統治しては多くの開拓移民を送り込んだ中での、日本帝国の加害、負の出来事類々を自ら映画化して世に問う、反省こもる作品が無い、こと。 自国先人の歴史に素直に向き合うことが、できる国人とできない国人の違いは……と、あらためて思ったしだい。 |
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