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夢舟亭
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夢舟亭 創文館(随想・エッセイ)
 



   日本映画『新聞記者』を観
                2020年06月27日


 先の日記、小説『背高泡立草』読後想 とおなじく、これを観たのもまた、かなり前となってしまった。

 地方住まいのわたしなどにもコロナの不快感は、それなりに心落ち着かぬ日々をもたらしていたのか、またはそういう書き込みは似合わないなどと思わせたのかもしれない。

 さて、映画『新聞記者』だが、知る人ぞ知る本年(2020年)第43回日本アカデミー賞の最優秀作品賞を得た。
 そして強調すれば、わが国的にいえばかなりの問題作といえるのかもしれない。
 つまりは今どきの政権を裏側から描いたのだから。
 日本映画界も捨てたものじゃないなぁ。

 もちろんフィクション作品とのことわりはある。
 しかし、とある大学新設問題や、お友達のセクシャルハラス問題もみ消しと”いかにもアリだよな”の生々しいテーマを扱っている。
 だからか、老政治評論家の”T氏”までが褒めている。

 こういう種類の映画の常か、小説「新聞記者」(東京新聞記者・望月衣塑子)が先にあったという。が、まだわたしは読んでいない。

 さて本題−−
 政権の裏には、市民生活の社会を、監視する組織がある。
 そうした官僚組織の目的は、市民社会が平穏穏便に存在させること。
 何も知らないで眠っている善き小市民らを、不要な報道などで目覚めさせるな。
 常にそれを第一主務と心得ている。
 言い換えれば、それが「お国のため」「国民のため」のご奉公なのだ、と。

 だから、けして表には見えない組織である。
 であればこそ、真実などと唱え政権の諸行を問題視悪行化したがる報道機関には、特に目を光らせている、ようだ。

 そうしてみれば、純粋一途な若い公官らには、納得のゆかない行いも指示されよう。
 そこで上司への反感も、組織と役目への不満も少なからず湧いて当然。
 けれど、相手が政権となれば、所詮は若輩一個人の思いなど、チリや小石ほどの意味もないわけで。
 思いつめての自死という話もあるわけだ。

 そうした組織を描いてゆくなかで、報道の士、この作品では若い女性新聞記者が、政権の裏に挑む。

 若い公官とこの記者とが目的をひとつにするのだが・・・。

 この先は観てのお楽しみ、ということにするけれど。 
 こうした作品では、どこまで現実を描けるかが価値となるけれど。
 フィクションとはいえ、現実ニッポンで今、”モリカケ&さくら”そして”クロカワ&カワイ”と、まぁ次々に政治の腐敗ぶりが見え隠れしているだけに制作陣への風当たりはハンパでなかったのでは・・。

 海の向こうのお国では、「バカで間抜けな−−」、などと時の大統領をこき下ろす映画を創れ観られているけれど。
 若者のデモでさえ制限されてしまうわが国では、現政権の裏話をたとえフィクションでも許せるとは思えなかった。
 それだけに、この作品の意味は大きいと思い、歓迎の気持ちで観終えたのでした。

 そうそう、最優秀主演男優賞として主演の松坂桃李が、最優秀主演女優賞に韓国俳優シム・ウンギョンが当作品から選ばれたことは、日本映画関係者いまだ健在、と世界に示すことかもしれない。




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