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夢舟亭 エッセイ 映画『MINAMATA-ミナマタ』を視る 2022年05月04日 写真家ウィリアム・ユージン・スミスのドラマ化である。 ユージン・スミスというと、戦争写真家というのが世界一般的認識で、かつ米国ライフ誌のというべきか。 幼い頃に母親から与えられたカメラで飛行機を撮ったことが、カメラ人生、そしてフォトジャーナリストへのきっかけ、とネットに見た。 戦争カメラマンの名と彼の年代からいうなら、第二次世界大戦であり、とくに沖縄戦従軍を、負傷を受けてまでの記録がその前半生。 戦後はジャズマンたちの”写真”フォトと”音”サウンドを記録したという。 ここでの本題ミナマタとの関係だが。 ニッポンとのつながりは、やはり写真。 日本のフィルム会社のCM仕事から伴侶を得たという。 そして水俣病、被害者たちへフォーカス。 ここでもフォトジャーナリスト精神、身をもってコトにあたる。 映画では加害社からの高額な「手を退け」料を突っぱねるユージン・スミス、を演じるのがジョニー・デップ。 この俳優はたしか娯楽作品の人。 それがこういう種の、ドキュメンタリーかつ社会派ドラマ。 それも環境汚染を社会に世界に、問題提起するという敵多く邪魔が入るたぐいの、弱者救済ドラマへの出演。 いかなる心境、経緯での出演だったろうか。 問題当事国の日本国内での撮影となれば、現在も嫌がられるはず。 こういう場合のとくに日本人俳優陣はその出演関与に一歩退きそう。 それを押して演じた方々に頭がさがる。 なにせ『チッソ』といえば『ミナマタ』。 ミナマタとは、熊本県の水俣湾へ日本窒素肥料株式会社の工場から排出されたメチル水銀化合物(有機水銀)汚染された魚を食したことで発症した、水俣病。 2022年現在も、完全な和解収束には至っていない環境汚染による事件。苦しむ人は未だに多い。 チッソという名でいわれる当事社は現存する化学薬品会社。 そうしたこともあり、メディアを賑わすはずのハリウッド有名俳優主演のこの作品も、日陰にあるままの気がするのはわたしだけか。 とはいえ、さすがに作品製作への賛辞は国内外を問わずあり公式サイトにも記されている。 作品中では、公害問題を訴える市民たちの苦闘と事件の核心を撮ろうとする主人公に、降りかかり押し寄せる多くの阻害抵抗の障害が描かれる。 それらあまたを乗り切振り切りながら、世界へ訴える写真を撮ろうとするその情熱。 現在からの視線で結果を知る映画を観る者としても、感動せずにおかないことはたしか。 とくに『入浴する智子と母』という一枚の白黒写真は、現実実際に世界へ大きな影響を与えたものとして、映画のなかでも扱われている。 映画最後のエンドクレジットには、水俣同様の世界各国の環境汚染事件22件が、国名とともに表示され、被害者へこの映画作品を捧げる、とある。(末尾転載) その中には日本の福島第一原発事故も明記されてあった。 * 以下はエンドクレジットから−− インドネシア:金採掘による水銀汚染 ウクラウナ:チェリノブイリ原発事故 世界各地:サリドマイド薬害 ハンガリー:アルミナ工場 有毒廃棄物流出 米国:タンカーの原油流出 日本:福島第一原発事故 ブラジル:ブルマシューニヨ 尾鉱ダム決壊 ブリキナファソ:金採掘による水銀汚染 ドミニカ共和国:バッテリー工場による鉛汚染 インド:ボパール 殺虫剤工場事故 米国:石油掘削施設爆発事故 象牙海岸:有毒廃棄物投棄 カナダ:製紙工場による水銀汚染 イタリア:セベソ社 ダイオキシン汚染 中国:貴ショウ鎮 電子機器投棄場 米国:ウェストレイク:核廃棄物 米国:フリント:水道水の鉛汚染 米国:ブリオ社による地下水汚染 米国:ラブキャナル 有毒廃棄物投棄 米国:ニューアーク 水道水の鉛汚染 ベトナム:産業廃棄物による有毒廃棄物 バングラデシュ:地下水のヒ素汚染 「本作を水俣の皆さんと世界中の公害被害者および支援者に捧げます」 *+* 関連自文: 石牟礼道子(完本)「春の城」を読む] 「苦海浄土三部作」読後記 |
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